プロジェクト紹介 1:DX戦略策定支援プロジェクト
DXの複雑な課題に直面する経営者に、最上流の戦略フェーズから伴走する
急速にテクノロジーが進化する現代の企業経営において、データとデジタルテクノロジーを活用した変革を実現することは、最重要課題の1つです。そういった企業の、戦略的・包括的な経営パートナーとして、ともに課題に立ち向かい自走に向けてサポートしていくのが、Digital Advisory事業部のプロフェッショナルたちです。 大手日系企業のDX推進プロジェクトにおいて、戦略策定の支援に取組んでいるチームについてご紹介します。
S. T
Digital Advisory事業部
デジタルアドバイザリーサービスラインリーダー
マネージングディレクター
2023年に数名規模で、R&D組織発の先端テクノロジーを活用したデジタルアドバイザリーサービスラインを立ち上げ、短期間で100名規模の組織へと成長させる。現在、デジタルアドバイザリー領域をリードしている。
O. K
Digital Advisory事業部
デジタルアドバイザリーサービスライン
シニアマネジャー
2022年、大手コンサルティングファームよりKPMG/あずさ監査法人に入社。DX戦略策定やAIガバナンス構築、データドリブンなプロセスの構築、データ分析高度化など、デジタルアドバイザリー業務に従事している。
K. K
Digital Advisory事業部
デジタルアドバイザリーサービスライン
アソシエイト
2025年、大手金融機関よりKPMG/あずさ監査法人に入社。DX戦略策定や内部統制構築(SOX支援/システム監査体制構築)など、デジタルアドバイザリー業務およびITリスクアドバイザリー業務に従事している。
──まず、Digital Advisory事業部の特徴と、今回のプロジェクトの背景から教えてください。
Digital Advisory事業部はクライアントのCIO(最高情報責任者)やCDO(最高デジタル責任者)といった方たちのパートナーとして、DX(デジタルトランスフォーメーション)推進のサポートをしています。最上流の戦略策定から実行フェーズのシステム設計やリスク対策、さらには運用と、上流から下流までをトータルで支援しているところが特徴です。そのためK.Kさんのような若手でも、DX推進に関わる業務をトータルに経験できる点が面白みといえるでしょう。
今回ご紹介するプロジェクトは、まさにこの一連の流れの最上流からスタートしたもので、現在は徐々に実行フェーズに移行しつつある、という段階にあります。クライアントは卸売業の上場企業で、経営陣からの「DXを推進したいのでサポートしてほしい」というご依頼に基づいてスタートしました。
同社ではDX推進の専任部署が発足したものの、既に社内の各部署ではそれぞれ独自にデジタル化に取り組んでいました。そのため全体最適化が図られておらず、投資効率の点でも課題がありました。企業のDXによくあるケースだと言えますが、そうした現状に危機感を抱いた経営トップからのご相談がきっかけでした。
DXとは単なるデジタル化ではなく、トランスフォーメーション、すなわち企業変革である、ということがあまり理解されていないのは、決して珍しいことではありません。
変革を実現するというゴールは同じでも、進めていく上での課題は、当然ながら企業によってまったく異なりますし、リスクも異なります。ですから本来はそうした各企業の状況を踏まえた上で個別にDXの戦略策定を実施していく必要があり、そこに我々のようなアドバイザリーの存在価値があるわけです。
プロジェクトの始まりは、クライアントの経営陣との接触が起点ですよね。
そうですね。要するに営業活動です。あずさ監査法人ではこれをBD活動(ビジネス・デベロップメント活動)と呼んでいます。
しかし営業活動といっても、我々は目に見える製品やサービスを取り扱っているわけではないので、パンフレットをお見せしながら商品やサービスをお勧めする訳ではありません。クライアントの経営陣のご相談を伺うところから始まります。そこを入口に、オーダーメイドでソリューションを考えていきます。
ですから、BD活動には相応の時間がかかるということですね。
今回のプロジェクトの場合は、BD活動の期間は約1年間でした。
「我が社もDXを始めたんですが、なかなか目に見える成果が上がらなくてね」「他社ではどうやっているんですか?」といった雑談ベースの会話がきっかけになる場合がほとんどです。もちろん経営者の方と知り合ってすぐにそういうお話になるわけではありません。ある程度の信頼関係ができてからの話になりますので、O.Kさんの言うように1年がかりになることも特に珍しいことではありません。経営トップの方々とそうした信頼関係を築けるかどうかは、アドバイザリーに求められる大切な能力ですね。
経営トップが相談してくれるのも、我々のことをパートナーとして信頼できると認めてくれたからですよね。経営トップからの何気ない相談をきっかけに深掘りしていき、その積み重ねで「それなら具体的な提案をしてくれない?」というところまで話を持っていくわけです。
ですから一番嬉しいのは、「ぜひあなたの力を貸してほしい」と言われることですね。コンサルタントとしての醍醐味を感じます。
──クライアントが評価する、Digital Advisory事業部の強みとは何でしょうか?
先ほどお話しした上流から下流までトータルにサポートできるという点に加え、特にクライアントから高い評価をいただいていると感じるのは、「市場の番人」とも呼ばれる監査法人ならではの中立性、公平性です。
ベンダー・ロックインという言葉があるのですが、システムコンサルティングのファームやSIer等にDX推進を依頼すると、特定のベンダーの製品やサービスの導入で統一されてしまい、以後ずっと、そのコンサルティングファームやSIerに依頼し続けるしかない、という状態になってしまう可能性があります。しかしこれがクライアントにとってベストかと言われると、必ずしもそうではありません。
我々は自社製品を持っていませんし、お抱えのSIerがいるわけでもないので、その分ベンダー・ロックインとは無縁に、中立性を保ったアドバイザリーサービスを提供することができます。これはKPMGのValues(価値観)であるIntegrity、つまり誠実さにも通じることです。
クライアントにとって最適であることが重要で、どのベンダーの製品やサービスを導入するかは本質的な問題ではない、ということですよね。
そういうことですね。監査法人としての事業基盤が盤石であるからこそ、自社の製品やサービスの販売に頼る必要がない、ということもその背景の1つでしょう。
聞くところによると、あずさ監査法人はアドバイザリーサービスを提供したクライアントから、引き続き他の案件も発注いただく率が非常に高い。あまり知られていませんが、これは私たちにとって大きな誇りです。
私が大手金融機関からあずさ監査法人に転職した理由の1つが、まさにベンダー・ロックインの問題でした。前職でSEとして働いていた際に、本当はAというプロダクトを使いたいのにBを使わざるを得ないということがあって、疑問に感じたんです。真にユーザー主体のシステムを構築するためにも、もっと上流からDXに携わりたいと志望したことが、あずさ監査法人を選んだ理由でした。
──案件の受注から戦略構築のフェーズまでの流れについて教えてください。
クライアントの経営トップから「あなたにお願いしたい」と言っていただくまで信頼関係を積み重ねてはいても、ビジネスとしてスタートするには当然ながら契約を結ばなくてはなりません。まずはRFP(提案依頼書)と呼ばれる書類をいただき、提案書を作成して競合他社とのコンペに臨み、受注を勝ち取るというのが一般的な流れです。しかし、クライアントの悩みが、具現化する前の、抽象的・潜在的な段階から、自然と一番に相談をもらえる状態が、私たちが目指したい理想像です。
それこそ、経営トップからの絶対的な信頼を得ていることの証しですからね。
戦略構築において重要になるのが、仮説思考です。クライアントからヒアリングを行うことで、実際にどんな問題が発生しているのか、その問題は組織のどこから生じているのか、背景には何があるのかといったことを、仮説を立てながら探っていきます。すると次第にさまざまな事象が糸でつながっていくように感じられ、最初に立てた仮説が裏づけられていきます。
仮説思考の具体的なケースには、どんなものがあるんですか?
例えば、DXは企業変革なので本来は経営者のトップダウンで進めていくべきなんですが、実際にはトップダウンになっておらずに現場の判断のみで進められていたり、推進するための専任部署が機能しておらず部門間の連携が取れていなかったりします。各部署でDXに取り組んでいても、その部門内での部分最適に終わっていることも往々にしてあります。営業部門、経理部門、企画部門それぞれでデータを活用してはいるものの、横の連携が取れていないために全社的なデータ活用に結びついていないというケースも珍しくありません。
今回のプロジェクトについて言えば、まさにそういった仮説思考のもとで課題の洗い出しを行いながら、今まさに戦略構築を進めているところです。
ですからこのプロジェクトの具体的な成果という点では、まだ先にはなります。しかし、戦略構築には上流フェーズならではの醍醐味ややりがいがあることは間違いありません。さまざまな課題をパズルのように結びつけて戦略を組み上げていくのは、上流フェーズの面白いところですよね。
最初は厳しい顔をされていた経営トップの方が、2度3度と提案を重ねるにつれて次第に柔和な表情になっていくと、心を開いてくれたと嬉しくなりますよね。自分が認められ、受け入れていただけたと感じます。
戦略フェーズは真っ白いキャンバスに絵を描くようなものですから、一度描いては消して、また描いてみるといった自由さもありますね。常により良いアウトプットを目指して試行錯誤しながら前に進んでいく感覚は、戦略構築の醍醐味だと感じています。それに、経営トップと直接お話ができることも非常に刺激的です。なかなか経験できることではないですから。
──プロジェクトの今後についてお聞かせください。
最終的に目指しているのは、クライアントが「自走可能」なDXです。つまり我々が不在でも、クライアントが自ら持続的に変革に取り組んでいけるようになることで、そこまで伴走することが我々の使命です。ある意味、「もう皆さんのサポートは必要ありません」と言われることこそがゴールですね。
私はまだ経験が浅いので、個人的な目標としてはこのプロジェクトを通じてS.Tさんのおっしゃる仮説思考の力をもっと磨いていきたいと考えています。それにクライアントが自走できるようになっても決して縁が切れるわけではなく、将来もさまざまなご相談をいただくと思うんです。そのときに、今以上にクライアントの力になれるように成長しなければと思っています。
クライアントを取り巻く環境は激しく変わっていきますから、戦略の見直しやシステムの見直しも当然必要になるでしょう。柔軟に対応していくためには、クライアントに伴走する状態をもう一つ超えて、クライアントの一員と認められるぐらいでありたいですね。
Digital Advisory事業部は、データサイエンティストやエンジニアなど、さまざまなスペシャリストが、R&Dからフロントまで幅広い業務に携わっていることが特徴です。私は、Digital Advisory事業部が、「デジタル人材にとってサステナブルな組織」であるべきだと考えています。AIの実用化などデジタル技術の進化はめまぐるしいものがありますが、そんな激しい変化の中でも、常に価値ある人材として成長できる環境を実現していきたいと思っています。
※ 記事の記載内容は2025年10月時点のものとなります。