社員インタビュー1
サステナブルバリュー統轄事業部(SV統轄事業部)/KPMGあずさサステナビリティ
“人権”に対する知見をコアに、ESG・サステナビリティに関するアドバイザリーの可能性を広げる。
M. I
KPMGあずさサステナビリティ株式会社
アドバイザリー事業部
マネジャー
2017年入社
Profile
大学卒業後、日系メガバンクに入社。支店で法人営業を経験するうちに、学生時代に学んだ専門性を活かし切れていないことに気づき、転職に踏み切る。そのタイミングでKPMGあずさサステナビリティの存在を知り、この分野で新たなキャリアを築いていきたいと考えて入社した。KPMGジャパンのオーケストラのバイオリン担当という一面も持っており、コロナ禍で休止が続いている演奏会の再開を心待ちにしている。
原体験を仕事としていきたい
今でもはっきり覚えているのが、小学校低学年の時に見た、テレビのドキュメンタリー番組です。私は大好きなチョコレートを食べながら見ていたのですが、その番組ではカカオ農園で、当時の私と同じくらいの年齢の男の子が過酷な労働を強いられている様子が映っていました。幼いながらも、その時に感じた不条理さは、私の心に強く刻まれました。
そんな体験が原点だったのだと思います。学生時代は国際法を専攻、特に国際人権法の一分野である「ビジネスと人権」に関する研究を進めました。教官にも恵まれ、「人権」への学びは大学で深めることができましたが、「ビジネス」に関しては、実社会のなかで体得する必要があると考え、オランダ留学時代に参加した就活イベントをきっかけに入社を決めたのが日系のメガバンク。多様な業界と接点を持てる金融業界で、幅広くビジネスを学びたいと考えました。しかし実際に入社し、配属された支店で仕事に就いてみると、思うようにはいきませんでした。法人営業として多様な業界の企業を担当し、上司やお客さまから学ぶことは多々あったものの、日々目の前の数字に追われる中で、「自分の専門性を活かしながら、新たな知見を得ていく」ということに難しさを感じました。そのタイミングで出会ったのが、KPMGあずさサステナビリティです。当時は今ほどESG(経営において、環境・社会・ガバナンスを重視すべきだという考え方)領域が注目されてはいませんでしたが、この分野こそ自身の原点であり、また大学で身に着けた専門性を発揮できるのではと感じ、ここで新たなキャリアを積みたいと考えました。人権に関する知見を自分のコアとしつつ、それ以外の領域においても経験を積めることに魅力を感じ、入社を決めました。
クライアントのESG・サステナビリティに関する課題解決を専門家としてサポート
入社後は、希望していたとおり人権に関するアドバイザリーをコアとしつつESG領域のさまざまなプロジェクトに広く携わっています。具体的な内容としては、人権方針の策定、人権デューディリジェンスのプロセス構築、IPOを目指す企業のESG対応のサポート、ESG要素を織り込んだ銀行の投融資プロセスの構築、M&AにおけるESGデューデリジェンスなどです。クライアントは上場企業を中心に幅広い業界にわたっており、常時10以上のプロジェクトが走っています。
財務情報だけでなく非財務情報(財務諸表などで開示される情報以外の情報)が企業価値に大きな影響を与えるようになった現在、ESG対応はもはや企業にとって“常識”となっています。事業ポートフォリオ評価にESGリスクの視点を組み入れるような先進的な企業も出てきています。今やESG対応は現場の一担当者の業務ではなく、経営陣が正面から向き合うべき課題です。クライアントもそうした現状を認識されていますが、いざ具体的な対応に着手しようとすると難しさを感じられることもあり、我々のような専門家にお声がけ頂く機会は非常に増えています。
経営課題の重要テーマとしてESG・サステナビリティに対応されたいクライアントニーズの高まりを受け、あずさ監査法人側でもSX(サステナビリティ・トランスフォーメーション)事業部が新設されるなど、KPMGではグループ一体となったアドバイザリー体制を強化しています。案件によっては、彼らと連携してクライアントの支援に当たることもあります。長年のアドバイザリー経験で培ってきたさまざまな知見を、ESG・サステナビリティというアングルから再整理し、クライアントが抱える多様な課題にグループとして機動的に対応できることは、KPMGならではの強みだと感じています。
先進的な取組みにも関わり、影響力の大きさを実感
ある大手金融機関の人権方針策定のプロジェクトに携わったことは、印象深い経験でした。このクライアントは、ESG・サステナビリティに対する取組みを深化させる一環として、特に人権への自社の対応姿勢を「人権方針」として明確に打ち出したい意向を持っておられました。金融機関の場合、投融資先の企業で何か不祥事や問題が発生すると、それは金融機関の“責任”でもあると捉えられ、さまざまなステークホルダーから責任追及されることも珍しくはありません。したがって、金融機関としてのビジネスの持続可能性を担保するためにも、人権侵害を助長するようなビジネスに関連する企業や、人権への取組みが一般的なスタンダードに鑑みて明らかに足りていない企業に対しては投融資を実施しない、あるいは打ち切るというスタンスを示す必要があります。一方で投融資の打ち切りは、投融資先の経営を左右しかねない重大な判断です。本プロジェクトでも人権方針のなかで自社のスタンスをどう明確化すべきか、という点は難しい議論になりました。最終的には、金融機関としての社会への影響力や事業にとってのESG・サステナビリティの重要性を考慮し、投融資先と対話を重ねても状況が改善されない場合には、投融資を打ち切る可能性があることを明確化することになりました。これは国内でも非常に先進的な取組みで、本プロジェクトを通じてクライアントのビジネスの持続可能性に貢献できたことに大きなやりがいを感じました。
本案件は金融機関の例ですが、当社が支援するクライアントは、プライム上場の製造、通信、小売り、サービスなど多岐にわたります。支援するクライアントを超えて、私たちが提供するプロジェクトの影響がサプライチェーンの裾野まで広がる、そんな影響力の大きさもまた、この仕事の魅力の1つだと感じます。
企業のESG・サステナビリティへの対応をサポートすることで、企業価値の向上に貢献したい
先進的で難易度の高いプロジェクトに携われるのは、当社ならではの面白みだと感じますし、前例がないプロジェクトであっても、挑戦をサポートしてくださる上司やチームに恵まれている環境は非常に有難いです。
この分野を専門とするコンサルタントとして、クライアントを“あるべき姿”に導いていくことは我々の重要な責務だと認識しています。一方で、クライアントの状況は千差万別であり、必ずしも100点の取組みを最初から目指すことが最適解だとも限りません。各クライアントの状況に合わせながら、先を焦らず、時間をかけて伴走する姿勢を大切にしています。
ESG・サステナビリティに対する企業の意識や取組みはここ数年でずいぶん変化し、経営の周辺課題から重要課題へと徐々に格上げされてきたと感じます。企業の取組みの後押しに繋がる政策やガイドラインなども整備されはじめており、日本社会の機運の変化を実感します。ESG・サステナビリティを取り巻く環境は目まぐるしいスピードで変化しています。アンテナを高く有用な情報をキャッチしながら、クライアントの新たな課題解決のサポートにどんどんチャレンジしていきたいと考えています。社会全体としてESG・サステナビリティへの対応強化に舵が切られているなか、コンサルタントという立場から、自身の専門性を活かしつつ企業価値の向上に繋がる仕事ができるよう、これからも頑張りたいと思います。
※記事の記載内容は、インタビュー取材時点のものとなります。